1 東京地裁 平成4年9月16日判決 原状回復等請求事件 判例時報1458-87 一、取引形態 建売 二、当事者 ・原告 X(買主) ・被告 有限会社Y(売主) 三、 Xの請求 ・主位的請求 原状回復(売買代金を返還せよ) ・昭和63年5月30日 売買契約 2、Xの主張 ・本件建物の建築は外壁工事・防水工事が手抜き工事であり、外壁等に 多数のクラックが生じ、著しい雨漏りがし、水道管の破裂、汚水浄化 槽からの漏水、振動障害等を引き起こす原因となる、通常発見困難な 瑕疵が、本件売買契約締結時に存在した。 ・本件建物は、現状のまま建物を使用することは社会常識的に困難であ り、本件売買契約の目的を達成することは不可能 3、Yの主張 ・Xは、本件売買契約当時、瑕疵の存在を知っていたのであり、「隠れ た瑕疵」とはいえない。 ・Xは、遅くとも昭和63年8月までに、瑕疵の存在を知ったところ、 本件訴えの提起(解除の意思表示)は、それから1年以上経過してい るため、民法566条3項の除斥期間が経過している。 4、争点 ・瑕疵の有無、程度(解除が認められる程度の重大な瑕疵といえるか) ・「隠れた」瑕疵と言えるか ・除斥期間の始期 四、裁判所の判断 1、本件建物には、外壁にクラックが発生し、防水工事が不完全・不適切 であるなどの瑕疵が存在する。また、設計・施工上の欠陥も存在する。 2、これらの瑕疵は、その専門家でない限り、不動産取引について知識経 験を有するものであっても、通常、認識・判断の困難な事項である。ま た、設計・施工上の欠陥は、専門家である調査を待って初めて明らかに なる性格のものであり、売買契約時存在した通常容易に発見できない瑕 疵といえる。 3、本件建物の瑕疵は重大であり、そのうちには構造上の瑕疵であるため 建て直しをしなければ直らない性質のものがあることも考慮すると、本 件建物を賃貸して使用収益するという本件売買契約の目的は、達成する ことができなくなったといえる。 4、買主が、売買契約当時、瑕疵があることを知っていたか、知らなかっ たことにつき過失がある場合は、結局「隠れた」瑕疵といえず、売主は 瑕疵担保責任を負わない。 ただし、瑕疵の一部につき、悪意または過失があったにすぎない場合、 直ちに瑕疵担保責任の追及ができなくなるものではない。特に、買主に 悪意または過失の認められる瑕疵が軽微で、契約の目的を達成できない 程度に重大な瑕疵の存在については悪意または過失が認められない場合 には、「隠れた」瑕疵があるものとして、解除することができる。本件 においては、クラックの存在、雨漏りの発生があったことにつき認識が あったにすぎず、重大な瑕疵の存在について悪意であったとはいえない。 5、民法570条、566条3項にいう「買主が事実を知りたるとき」と は、買主の悪意・過失の有無を判断する対象事実の場合と同様、解除権 の除斥期間については、契約解除ができる程度の重大な瑕疵を知ったと きと解すべきである。 本件において、Xは、「窓から水が入る」といった苦情を聞いていた だけであり、「買い主が事実を知った」とはいえない。 コメント ・ 瑕疵担保責任に基づく売買契約の解除をする場合において、除斥期間 は、「雨漏りがする」といった軽微な瑕疵を知ったときから進行するの ではなく、契約解除ができる程度の重大な瑕疵を知ったときから進行す るとした事例。 ・ 賃貸用建物の売買において、建物の瑕疵が重大であり、売買の目的が 達成できないとして、瑕疵担保責任に基づく売買契約の解除を認めた事 例。
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