10 大阪地裁平成3年6月28日判決
    損害賠償請求事件 判例時報1400-95
  
・建物の構造上の安全性能の有無の判断においては、建築基準法及び同施行規則
 の基準を用いて、本件建物規模程度の木造住宅に通常備わるべき安全性能が備
 わっているかどうかにより、これを判断すべきである。 
・基礎構造、軸組構造、排水処理施設の欠陥を認定した事例 
・売主の瑕疵担保責任に基づく損害賠償は信頼利益の賠償を内容とするものであ
 り、履行利益の賠償は認めることができないとした事例
 
事案の概要
1、Y3が本件建物を建築し、土地とともにY2に売却。Y2は土地建物をY1
 に売却し、Y1からXが購入。 
2、Xは入居後、本件建物に基礎構造、軸組構造等の瑕疵を発見。 
3、XはY1、Y2、Y3に対し、損害賠償請求(補修工費相当額、補修期間中
 の賃料、宿替え費用、調査鑑定費用、慰謝料、弁護士費用) 
 @ Y1に対する請求 民法570条の瑕疵担保責任 
 A Y2に対する請求 債権者代位権に基づき、Y1のY2に対する損害賠償
                      請求権を代位行使 
 B Y3に対する請求 不法行為(使用者責任)
 
裁判所の判断
1 判断の基準 
  本件建物の構造上の安全性能の有無を判断するについては、最低限の基準を
 定める建築基準法及び同施行規則に規定する建物構造に関する基準を用い、本
 件建物規模程度の一般的な小規模木造住宅に通常備わるべき構造上の安全性能
 が備わっているか否かにより、これを判断するのが相当である。 
2 被告らの責任について 
 @ 被告Y1に対する請求 
   原告は、売主の瑕疵担保責任(民法570条、566条)を根拠に、後記のとお
  りの修補費用等を損害として賠償する責任があると主張する。 
   しかしながら、同条の瑕疵担保責任に基づく損害賠償は、買主が瑕疵がな
  いと信じたことによって被った損害の賠償(いわゆる信頼利益の賠償)を内
  容とするものであると解すべきところ、原告の主張する損害のうち、これに
  該当するものはなく、右損害は、いずれも、瑕疵のない履行がなされたなら
  買主が得たであろう利益(いわゆる履行利益)についてのものである。右履
  行利益の賠償は、売主の瑕疵担保責任を根拠としてはこれを認めることはで
  きない。 
 A 被告Y2に対する請求 
   被告Y1に資力がないことを認めるに足る証拠は存しない。従って、債権
  者代位権に基づく請求は認められない。 
 B 被告Y3に対する請求 
   本件建物の設計、工事監理者は、被告Y3に勤務するAであるが、本件建
  物の基礎構造及び軸組構造の各欠陥は、いずれも本件建物の新築当初から存
  在し、建築に従事した下請け業者の施行不良、技能不足によりなされたもの
  である。 
     ところで、右Aには、本件建物の設計監理を担当するものとして、職務上、
   建築に従事する下請け業者に建築基準法令を遵守させ、もって建物の構造上
   の安全性能を確保させて、第三者に損害を被らせないようにする注意義務
   (建築士法18条参照)が認められるところ、前記構造欠陥は、いずれも右注
   意義務を怠った結果生じたものである。原告は、これにより損害を被ったの
   であるから、Aの行為は原告に対する不法行為にあたる。 
     そして、Aの右義務違反は、被告Y3の業務である本件建物の設計施工監
   理の職務に従事する際になされたものである。 
     従って、被告Y3は、原告に対し、民法715条の使用者責任に基づき、
  原告の被った損害を賠償する責任を負う。 
3、原告の損害 
  ・補修工費相当額 487万円 
  ・賃料相当額   認めない
  ・宿替え費用   認めない 
  ・調査鑑定費用  60万円 
  ・慰謝料     50万円 
  ・弁護士費用   60万円 
 

        
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