8 最高裁 平成9年7月15日判決 請負工事代金請求事件 判例時報1598-65 ・ 請負契約の注文者が、瑕疵修補に代わる損害賠償債権をもって、報 酬債権との相殺の意思表示をした場合には、注文者は、相殺の意思表 示をした日の翌日から、相殺後の報酬残債務について履行遅滞による 責任を負うとした事例 裁判所の判断 請負人の報酬債権に対し、注文者がこれと同時履行の関係にある目 的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表 示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬債権について、 相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うものと 解するのが相当である。 けだし、瑕疵修補に代わる損害賠償債権と報酬債権とは、民法63 4条2項により同時履行の関係に立つから、注文者は、請負人から瑕 疵修補に代わる損害賠償債務の履行又はその提供を受けるまで、自己 の報酬債務の全額について履行遅滞による責任を負わないと解される ところ、注文者が瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権として請 負人に対する報酬債務と相殺する旨の意思表示をしたことにより、注 文者の損害賠償債権が相殺適状時にさかのぼって消滅したとしても、 相殺の意思表示をするまで注文者がこれと同時履行の関係にある報酬 債務の全額について履行遅滞による責任を負わなかったという効果に 影響はないと解すべきだからである。
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