日弁連への意見書


「住宅の品質確保促進法」にもとづいて設置される指定住宅紛争処理機関に関して、 全国協議会及び単位弁護士会から日本弁護士連合会に要望書・意見書が出されています。
 
     要望書・意見書は「性能保証住宅」の紛争処理にあたって、紛争処理機関の役割、解決の参考にな
    るガイドラインの内容等について、危惧を表明しています。
 

    ○欠陥住宅被害全国連絡協議会の要請書 

    ○    同上 全国協議会の吉岡幹事長の朝日新聞への投稿 

    ○京都弁護士会消費者保護委員会の意見書 

    ○大阪弁護士会の意見書 

    ○住宅品質確保促進法の法的問題点・・京都ネット総会発表レジュメ

                         以上


全国協議会の要請書                       2000年2月  日
 
      指定住宅紛争処理機関に関する要請書
 
  日本弁護士連合会  御中
  各単位弁護士会   御中                  欠陥住宅被害全国連絡協議会
                                  代表  上野 勝代
 
                     要請の趣旨
 
 1 日本弁護士連合会においては、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく指定住宅紛争処
  理機関において、住宅紛争解決の参考とされるべき技術基準(案)、技術関連資料集(案)の内容に
  ついて、同法の目的に資するものかどうか十分に検討され、建設省に内容の訂正等を求められること。
 
 2 各単位弁護士会においては、上記技術基準(案)、技術関連資料集(案)の内容を十分に検討され
  たうえで、住宅紛争処理機関の指定を受けるべきか否かを慎重に判断されることを要請します。
 
                      要請の理由
 
 1 当協議会は、1996年12月に、欠陥住宅問題の解決を目指す建築士、研究者、弁護士等で構成した団
  体で(現会員数  名)、欠陥住宅被害の予防と救済のために、全国各地で研究会を開催する等の活
  動を行っています。
  
 2 今般、「住宅品質確保の促進、住宅購入者の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決
  を図る」ことを目的とした「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下「品確法」といいます。)
  が成立し、2000年4月から施行される予定となっていますが、品確法では、同法に基づき性能評価を受
  けた新築住宅について、欠陥問題等が発生した場合に、裁判外紛争処理機関として弁護士会が指定住
  宅紛争処理機関の機能を果たすべきことが期待されています。
   そして、既に、日本弁護士連合会から、各単位弁護士会に、上記機関として建設大臣から指定を受
  けるか否かの意向確認がなされています。
 
 3 ところが、指定住宅紛争処理機関における紛争処理の参考となるべき「技術的基準」の具体的内容
  (同法70条に基づき建設大臣が定める)及び、紛争の迅速適正な解決に資するべく建設省ないし住宅
  紛争処理支援センターが提供するとされている「技術関連資料集」の内容は、現時点で未確定である
  ばかりでなく、案として建設省から提示されているその内容には、次のとおり、同法の目的とはおよ
  そ掛け離れていると評価せざるを得ない問題点を抱えています。
 
 (1)技術基準について
   最終案では、床の傾斜が1000分の3未満の場合、「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低
  い」とし、鉄筋コンクリート造住宅、鉄骨鉄筋コンクリート造住宅のひび割れについて、幅0.3ミリ未
  満の場合にも、原則として「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い」等とされています。
   しかし、上記数値は、通常の施工であれば、生じ得ない数値であるはずで、「構造耐力上主要な部分
  に瑕疵が存する可能牲が低い」とは到底評価し得ないものです。
   かかる住宅取得者に不当に不利な基準案が準備されていることは、指定住宅紛争処理機関制度が、住
  宅購入者の利益の保護を目指す制度となりえない危険性があります。
 
 (2〕技術関連資料集について
  @ 建設省は、1999年11月、不具合事象の発生原因の特定方法、機器の使用方法、補修工事の実施方法、
   補修工事の費用の確認方法、から構成される「技術関連資料集」案を作成しました。  
    しかし、その内容は、後記資料(齋藤意見書、澤田要望書)に指摘されているとおり、欠陥住宅被
   害の公正な回復にとって障害となるものでした。
    すなわち、基礎断面等の寸法不足等の住宅の基本構造部に重大な欠陥があることが判明した場合で
   も、既存の床の上への床施工で補修できる場合があると判断されていたり、基本構造部に重大な欠陥
   がある場合にもかかわらず補修費用が低額であることが想定されたりしており、到底、基本構造部に
   欠陥がある住宅を、住宅取得契約によって約束された品質と価値を有する住宅に回復することか不可
   能な内容でした。
 
  A その後、2000年1月、建設省は、技術関連資料集の修正基本方針案を作成しました。
    これによれば、工事費用の金額の表記はされないこととなりましたが、補修方法例の記載では、
   「補修後の住宅の持つ品質・性能が契約時点で想定されていたものと比べて、十分に回復されない部
   分がある場合は、その内容を明確に記載する。」とされています。
    これは、すなわち、技術関連資料集で想定されている補修方法は、基本構造部に欠陥原因のある住
   宅を、住宅取得契約によって約束された品質と価値を有する住宅に回復することを目的とするもので
   はないことを明かにしています。
    しかし、欠陥住宅による被害は、欠陥住宅を、住宅取得契約によって約束された品質と価値を有す
   る住宅に補修して初めて救済されるものです。
    すなわち、重大な欠陥がある場合には、取壊し建替えも認められるべき場合があります。
    ところが、技術関連資料集は、かかる目的、補修方法に全くふれていません。
    このような技術関連資料集では、裁判外紛争処理機関として、欠陥住宅紛争を迅速適正に解決する
   ことは不可能となる危険があります。
    かかる技術関連資料集補修方法編の問題点については、大阪弁護士会意見書においても、「建築基
   準法違反や基本構造部分の重大な欠陥を結果的に放置することになりかねず」「極めて問題である」
   と指摘されています。
 
 4 未だ案の段階であり、また、参考基準であることを考慮しても、上記問題点を含む方向で、「技術的
  基準」「技術関連資料集」の内容が確定されれば、指定住宅紛争処理機関における欠陥住宅紛争の公正
  妥当な解決は不可能となります。
   また、これまでの欠陥住宅訴訟における判例の積み重ねにより獲得されてきた欠陥注宅被害者救済を
  無にする危険があります。すなわち、建設省等が提示した技術基準案は、とうぜん、裁判所においても
  その証拠価値を認め、その基準等に基づく欠陥の判断、補修方法の判断等がなされれば、被害救済は著
  しく後退します。
   さらに、欠陥住宅紛争の迅速適正な解決を期待されて指定を受けた各単位弁護士会は、公正妥当な紛
  争解決をなしえない結果となり、国民からの信頼を失うおそれがあります。
 
 5 以上から、要請の趣旨のとおり、日本弁護士連合会においては、技術基準、技術関連資料集の内容に
  ついて、品確法の目的に資するものかどうか十分に検討され、建設省に内容の訂正等を求められること
  を要請し、各単位弁護士会においては、技術基準、技術関連資料集の内容について、慎重な検討をなさ
  れたうえで、住宅紛争処理機関の指定を受けるべきか否かを判断されますよう、要請します。
 
 添付資料
   1  技術基準(一部)
   2  技術関連資料集(一部)
   3  1999年11月22日付け  日弁連住宅紛争処理機関検討委員会 齋藤拓生委員作成意見書
   4  1999年11月20日付け  日弁連住宅紛争処理機関検討委員会 
                  技術プロジェクトチームリーダー 澤田和也委員作成要望書
   5  朝日新聞論壇(2000年1月14日付け)
   6  2000年1月25日付 大阪弁護士会意見書
 
                                         先頭に戻る
 

  朝日新聞 2000年1月14日(金) 論壇への投稿       欠陥住宅の補修基準を厳しく               吉岡 和弘(欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長、弁護士・仙台弁護士会=投稿)      注文した背広のそでが短かったら、業者は直ちに作り直すだろう。「縫い足しでそでを伸ばしたか   ら代金を支払え」という店はないはずだ。ところが、住宅の場合はこれが許されるとしたら、消費者   は納得できるだろうか。欠陥住宅を滅らすことなどを目指して、住宅品質確保促進法が昨年六月に成   立し、今年六月までに施行の予定である。法に盛り込まれた性能表示制度の適用を受けて住宅に「傾   斜」「ひび割れ」などの不具合が発生した場合、同法に沿って新設される住宅紛争審査会が、業者と   消費者の間の紛争解決にあたる。      その際に、トラブル解決の参考となるべき技術的なガイドラインが必要になるとして、建設省住宅   生産課を中心とした技術的基準等検討委員会は、不具合(欠陥)の内容や測定法の考え方をはじめ、   不具合が発生した場合の補修方法についての技術基準案をつくる作業を行っている。    しかし、委員会で最近明らかにされた参考基準案は、消費者、とりわけ欠陥住宅をつかまされた被   害者を失望させる内容だ。    開示された「技術関連資料 修理方法編」(案)から修理法の一例を紹介しよう。たとえば住宅の   基礎部分(布基礎)の寸法不足が原因で建物が傾いた場合、その補修方法は傾きの度合いに応じて、   @布基礎の底盤の拡大A基礎の表面(天端)のならし作業(基礎と土台が接する面にモルタルを使っ   て傾きを調整する)B既存の床の上に床施工(床板の上に木片を入れて傾きを調整し新たな床板を張   る)の三通りがあるとしている。補修費用は@Aの場合は三百万円以下、Bの場合は五十万円から百   万円の範囲内で収める、などとしている。しかし、これでは業者が基礎工事を手抜きしでも、建物の   傾きがない以上は補修の必要はないことになる。事実上、業者の手抜き施工を容認、放置する結果と   なるだろう。    布基礎の寸法不足は、建築基準法や、融資した住宅の品質確保のため住宅金融公庫が定めた標準仕   様書に違反することになる。それだけに、どうして木片やモルタルをはさみ込めばよい、という見解   が堂々と出されるか、私には不思議でならない。    最も重要な基礎部分が手抜きされた場合は、「初めからやり直せ」と命じるべきではないだろうか。   こんな補修の住宅は売ろうにも売れないし、安く買いたたかれるだろう。    欠陥住宅の被害救済に取り組む私たち弁護士や建築士が強く懸念するのは、こうした補修基準が、   たとえ「参考基準だ」と断りを入れたとしても、必ずや「建設省のお墨付きの基準だ」と、独り歩き   することだ。たとえば、手抜き工事の典型ともいえる垂れ流し基礎(地面に穴を掘っただけでコンク   リートを流し込み、基礎の型枠作業を怠る施工法)を見つけた被害者が、業者に対して、基礎工事の   やり直しを求めて裁判を起こした場合、業者側は「損害額はフローリング(床)の張り替え費用の五   十万円で足りる」などと反論し、その証拠の一つとして、この補修基準が法廷に出されよう。その結   果、全国各地の被害者が提訴している欠陥住宅訴訟は総負け、総崩れとなりかねない。    欠陥住宅被害は財産被害に加えて、そこが生活の場となるため、精神的被害を含めた身体被害を起   こさせやすい。秋田県が出資した第三セクターの会社が、千葉県で多くの欠陥住宅を建てて、大きな   会問題になった。現在裁判が進んでいるが、原告の多くは自立神経失調症、不眠、イライラなどの   症状に悩まされている。    戦後の家不足を解消するため「質より量」を目指していた時代は終わった。住宅メーカーなどは大   きな資力、技術力を蓄えてきた。もはや、手抜き工事を容赦する理由はどこにも見当たらない。むし   ろ、手抜き業者には懲罰的賠償か、少なくとも工事のやり直しを命じるべきだ。それが欠陥住宅を根   絶させる近道だ。    厚生省が薬害から国民を守る役所だとすれば、建設省は、欠陥住宅の被害から消費者を守る役所で   あっでほしい。住宅は人間の生命と身体を守り、平穏で豊かな生活と人間としての尊蔵を守ってくれ   る重要な基盤となるからだ。                                            先頭に戻る    
  京都弁護士会消費者保護委員会の意見書             2000年1月 日      日本弁護士連合会   住宅紛争処理機関検討委員会     委貝長 平山 正綱 先生                               京都弁護士会消賞者保護委員会                                  欠陥住宅PL部会                                   部会長 永井 弘二    第1 意見の趣旨   「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に関し、建設大臣が定めようとしている住宅性能表示につい   ての評価方法の基準並びに住宅紛争支援センターが作成しようとしている「技術関連資料集」に関し、   貴委員会として建設省に対し以下の点につき意見を述べるべきである。また、貴委員会として日弁連に   対して、日弁連が建設省に対し以下のとおりの意見を述べるよう働きかけるべきである。    @住宅性能評価方法の基準について    設計段階での住宅性能評価と建設段階での住宅性能評価について、単なる機械的な関連性だけでなく、    有機的な関連性を保たせるような内容として定めるように意見を述べること。  A技術関連資料集について、    「1、補修によっても契約時に定められた品質が回復されないような補修方法は補修方法としては記    載しないこと」「2、補修に伴い費用として2次的費用発生の可能性がある場合には、当然に当該費    用についても検討する内容とすること」「3、欠陥によっては建替が妥当である場合もあり得ること    を明記すること」の意見を述べること。    第2 意見の理由  1 性能表示基準・評価基準について     昨年12月に配布された住宅性能表示基準・評価方法の基準においては、例えば、空気環境に関す    る評価方法の基準に見られるように、個々の使用材料が一定の基準を満たしているかどうかで評価す    る仕組みとなっている。     建設省々からの11月30日付け説明資料にもあるとおり、確かに、設計段階で評価するためには、    現実的には個々の使用材料について判断するしか方法がないのかもしれない。     しかし、例えば、クロスを貼る際の接着剤がホルムアルデヒドを発散するようなものであれば、空    気環境が表示性能を持たない場合もあり、こうした事は住宅自体の空気環境を調査することで判明す    る。住宅購入者にとってみれば、個々の使用材料が適合的なものであるかどうかが問題なのではなく、    購入した住宅自体の空気環境がどのようなものであるのかが垂要であることは言うまでもない。     本来、性能表示制度の趣旨は、個々の使用材料か如何なるものであるのかという点を表示すること    に意義があったわけではなく、最終的な住宅それ自体がどのような性能を有するかを表示することに    意義があった。こうした性能表示制度の本来的趣旨からすれば、設計段階では、技術的限界から個々    の使用材料を問題にせざるを得なかったとしても、建設段階で、性能表示制度本来の表示性能を有す    るか否かの確認手段がある以上、建設段階では、そうした調査確認を行うようにすべきである。    このように設計段階での評価と建設段階での評価を有機的な関連を持たせたものとすることによって、    住宅本来の表示性能の有無の確認ができると考える。単に、設計段階での評価どおりの使用材料を使    用しているのかどうかだけの確認では、住宅自体が本来の表示性能を有しているのか否かについては    未確認となり、住宅購入者は不測の損害を被る可能性を残すことになる。    そして、このように設計段階での評価と建設段階での評価の有機的関連を待たせるためには、設計段    階での評価のみを受けて、建設段階での評価を受けないという業者をできる限り排除しなけれぱなら    ない(この点については、建設省の説明でも前提とされていたことである)。ところが、現在の法文    上では、設計段階での評価のみを受けるという場合を排除しているわけではなく、むしろ、法文上か    らはそうしたことも許容されるかに見える。そして、今般の評価方法の基準においても、同様に設計    段階での評価のみに留めることを必ずしも排除する趣旨には見えない。    したがって、評価方法の基準の総論として、各評価機関は、設計段階での評価の申請を受けた場合に    は、当然に建設段階での評価も行うようにするなど、設計段階での評価と建設段階での評価が有機的    に関連できるようにする方策を盛り込むべきである。    2 技術関連資料集について   @補修方法、費用算定については、11月に公表された技術関連資料集素案に対し、各方面から種々の    意見が寄せられ、当初の極めて大きな問題点は徐々に解消されてきているところである。    しかし、今般公表された「技術関連資料集(案)に係る修正の基本方針に付いて(案)」においても、    以下に指摘するような看過できない問題点があると考える。   Aまず、補修方法例について、「イ)補修後の住宅のもつ品質・性能が契約時点で想定されていたもの    と比べて、著しく劣るものについては補修方法例に含めない。」としているが、当然の前提である。    しかし、「ロ)補修後の住宅のもつ品質・性能が契約時点で想定されていたものと比べて、十分回復    されない部分がある場合は、その内容を明確に記述する。」としており、性能が「十分に回復されな    い部分がある場合」でも、そうした補修方法については一定許容する可能性のあることが示されてい    る。    しかしながら、ここで問題にしている補修は、住宅に欠陥がある場合に業者等が欠陥被害回復のため    に行う補修なのであって、補修によって本来の品質・性能が回復されない場合など想定するのは、極    めて問題である。欠陥の回復は、「完全原状回復」以外の「代替手法」や、ましてや「対症手法」な    どの補修が容認される余地はない。    したがって、補修方法例については、「完全原状回復」が可能な補修のみを列挙すべきである。   B次に、工事費用積算については、積算シートの範囲として「補修の直接工事費部分のみ(暇疵の補修    に直接関連する「工事部分のみとし、例えばジャッキアップに伴う仕上げ材の不具合への対応等、二    次的に必要となる工事部分は含まず。)」としている。    しかしながら、ここでもAと同様に完全原状回復が問題になっているのであって、二次的費用につい    ても支出の可能性があるのであれば、その予測額を積算すべきなのは言うまでもない。   Cそして、従前、斎藤委貝の意見書にもあったとおり、欠陥によっては建替によってしか回復できない    陥もあるのであり、そうしたことがあり得ることを明記すべきである。    3 以上のとおりであり、上記意見の趣旨のとおりの意見を委員会として、あるいは日弁連として述べる    べきである。    なお、若干補足するならば、特に、技術関連資料集に対する各方面の意見の中には、業者側に立って    「対症手法」で済ませる場合もあり得ることを前提にしたかに見える意見も見受けられる。    これまでの欠陥建築紛争、とりわけ建替をめぐる紛争については、かつて後藤判事の意見にも見られ    るように、業者側に立って「建替を認めることは施主側に二重利得を発生させる」「それまでの居住    の利益分を控除すべきだ」などの議論が戦わされてきた。しかし、こうした議論は、現在の欠陥住宅    訴訟においては既に克服された議論であると言って良い。この背景には、欠陥建築物を建築した業者    は、すべからく「完全原状回復」すべき義務があるとの判断があるからである。    般の技術関連資料集作成にあたって、こうした過去の欠陥建築紛争における到達点を逆行させるよ    なことは決してあってはならない。そうした意味で、今般の技術関連資料集の持つ意味は極めて大    、少なくとも、日弁連として、強く以上の点についての意見を述べるべきである。                                                                                      先頭に戻る    
 
大阪弁護士会の意見書                     平成12年 月 日      住宅紛争処理検討協議会 平山正剛座長 殿               意 見 書                                 大阪弁護士会会長 滝井 繁男     住宅品質確保促進法案に基づく指定住宅紛争処理機関(住宅紛争審査会)の設置については、当会では   現在受け入れる方向で諸準備をすすめているが、現在、建設省の委嘱により財団法人日本住宅リフォー   ムセンター内に設置された住宅紛争処理検討協議会において、建設省側から提示されている具体案にお   いては、以下の問題点が見受けられるので、是非とも再検討の上、各単位弁護士会の指定申請〜受け入   れに支障のないようにされたい。    1、住宅に関わる相談業務の制度上の位置づけについて   現在提示されている各指定住宅紛争処理機関の相談業務体制については、司法に基づく性能評価住宅を   めぐる紛争処理業務に附随して行われる前さばき的な相談については、当該機関の事務職員が行うが、   それ以外の評価住宅に関わる一般相談・専門相談は当面行わず、同法に基づき設置される東京の住宅紛   争処理支援センターでの一般相談と専門相談(無料)で対応することとし、非評価住宅については各弁   護士会の有料法律相談叉は支援センターの一般・専門相談(有料)に回付することとされている。   この点については、昨年8月18日に行われた指定住宅紛争処理機関に関する全国説明会における建設省担   当者の説明や、大阪弁護士会内に設置された住宅紛争処理検討協議会に訪れた建設省担当者の説明にお   いては、相談業務に積極的な意欲のあるところは上記センターからの委嘱の形式で実施し、助成金の支   給も可能である旨表明されていたところであり、現在の案は、その時点から大きく後退している。   しかし、各単位弁護士会が住宅紛争処理機関として指定をうけるのに伴い、市民から住宅にまつわる相   談が多数持ち込まれることが予想される中で、現在の案ではそれに十分対応することができず、相談者   たらい回しにされるおそれがあり、弁護士会が住宅紛争の解決にのりだす意義が半減される。   とりわけ、毎年実施されている日弁連欠陥住宅110番においては、大阪を始め各地方でも、現在想定   されている性能基準を到底満たしええないと思われる欠陥住宅にまつわる相談が多数寄せられているこ   とを考えると、できれば全国8カ所の高等裁判所所在地において、また、少なくとも大阪においては、   当初より、前記支援センターからの委嘱の形式で、評価住宅についての一般・専門相談ができるよう体   制を整備すべきである。   また、単位弁護士会で、たとえば、住宅・建築紛争処理センターなどを設置し、住宅紛争審査会をその   業務の一環とし、同時に非評価住宅を含めて相談体制を整備した場合、支援センターからの助成対象は   どのようになるのか、明確にしていただきたい。    2、住宅紛争処理に係る情報開示と裁判等での利用について    現在提示されている指定住宅紛争処理機関のあっせん・調停・仲裁手続規程(案)によれば、紛争処   理機関の事例情報の活用については省令で定めない意向のようであるが、当事者のプライバシーの権利   を侵害しない範囲で、紛争・解決事例案を公刊したり、同種事例の照会に応じることは、住宅紛争の迅   速な処理にとって有益であると考える。   従って、指定を受ける各単位弁護士会の自治に配慮するとともに、指定住宅紛争処理機関が消費者にで   きる限り上記情報を開示する方向で運営できるよう、法に基づく秘密保持義務一両罰規定の解釈・運用   の指針を提示されたい。   あわせて、紛争当事者が指定住宅紛争処理機関において提出した書類、支援センターを通して入手した   当該住宅に係る性能評価書及び同機関において作成された現地調査報告書、鑑定書等を、同事案にかか   る後続の裁判で当事者が書証として利用できることを明確にされたい。    3、鑑定現地調査の実施について   現在検討されている案によれば、紛争処理に伴う現地調査と鑑定については、一事件につき一回の現地   調査を行うことを原則とし、鑑定は指名紛争処理委員によっても判断できないような特殊なケースに限   り行うものとされ、その費用は各々5万(委員謝金)、 一回あたり10万円程度として収支計画を見   積っている。しかし、紛争処理委員の目視による現地調査のみでは原因究明が困難で、建物の一部破壊   検査も含めた簡易鑑定を要するケースも多い上、本格的な鑑定となると普通の個人住宅でも数十万円以   上要するのが通常である。   従来、この点についても、上記全国説明会においては、紛争処理委員が必要と認めて実施した現地調査   及び鑑定については、1回については、すべて支援センターからの助成対象とし、当事者の負担がない   ようにするとのことであった。従って、上記調査・鑑定費用については、所要実費全額が支援センター   から助成金として支給されるよう収支計画書を練り直し、各指定住宅紛争処理機関の設置・運営に支障   が生じないよう、当面の国庫補助の方策も含めて十分検討していただきたい。    4、紛争処理の参考となるべき技術基準とその具体的な運用について   法70条に基づき、現在、指定紛争処理機関における紛争処理の参考となるべき技術基準を策定する作業   が進められ、併せて、紛争処理委員の手持ち資料として活用が期待される技術関連資料集等の作成がす   すんでいる。   しかし、現在提示されている同資料集「補修方法編」案によれば、たとえば、基礎断面の寸法不足等建   物の基本構造部分に瑕疵がある場合でも、「既存の床の上に床加工」するなど表面的な補修で足りると   される補修方法が提示されている一方、建て替えは想定されていない。   このような考え方では、建築基準法違反や基本構造部分の重大な欠陥を結果的に放置することになりか   ねず、ケースによっては取り壊し・建替え費用等まで認めるようになった判例の水準を下回るものであ   って、極めて問題であり、これが紛争審査会における処理や裁判の基準として、事実上一人歩きする懸   念がある。   従って、住宅紛争の技術性・専門性と消費者保護の見地から簡易・迅速な紛争の処理のために設置され   る指定紛争処理機関において、この制度の趣旨に反することのないように、当該技術基準の策定や技術   関連資料集等の作成にあたり、とりわけ補修方法と補修金額の提示について、新築と同様の状態に現状   回復できるだけの処方を表記されたい。                                             先頭に戻る  
 
京都ネット第三回総会 問題提起レジュメ                                 2000年(平成12年)4月16日                                 弁護士 神 崎  哲               住宅品質確保促進法の法的問題点    一 住宅品質確保促進法の三つの柱     1.瑕疵保証制度(瑕疵担保責任の強化)   2.住宅性能表示制度の導入   3.住宅紛争審査会制度の新設    二 瑕疵担保責任の強化(10年保証)ついて   1.制度のポイント    (1) 新築住宅の売買契約(建売住宅)・請負契約(注文住宅)において、売主・請負人の      瑕疵担保責任を10年間義務づけ(強行法規)      (2) 売主に対しても瑕疵修補請求が可能。     2.問題点     (1)「10年間の保証期間の起算点=引渡しの時点」      住宅においては、引渡し後10年以上経ってから瑕疵が発見されることもある。     この場合、結局、従前どおり、不法行為以外ない。      (2)「対象=(平成12年4月1日以後に売買・請負契約が締結された)新築住宅」      中古物件・新古物件は含まれず。故意にわら人形を介在させた場合、適用なし。      (3)「対象となる瑕疵=@構造耐力上主要な部分、A雨水の浸入を防止する部分」      例えば、雨水の浸入を防止する部分とは、開口部の建具以外に、「雨水を除するた     め住宅に設ける配水管のうち、当該住宅の屋根もしくは外壁の内側又は屋内にある部     分」とされるが、配水管が住宅内部を通って地下から外に出ている構造の場合、地下     で且つ外壁よりも外側にある部分の瑕疵は対象に含まれるのか?    三 住宅性能表示制度について     1.制度のポイント    (1) 建築基準法に定められた最低基準を上回る高性能住宅について、性能の表示方法      を規制。      (2) 本制度を利用して表示された性能は契約内容になり、性能の欠如は欠陥となる。      (3) 表示しようとする性能の有無を、設計段階と竣工段階の二度に亘り評価し、性能      評価書を交付。そのために、中間段階でも数度の検査が実施。     2.問題点    (1) 性能の表示項目・内容・方法が住宅取得者の期待から乖離      個別的な問題点は多数ある(ネットニュース.11参照)。      表示性能の評価方法に内在する問題として、例えば空気環境に関する性能は「ホル     ムアルデヒド放散量が少ない」等と抽象的に表示されるため、消費者は当該住宅自体     の空気環境として理解し期待する。しかし、当該性能の有無は使用材料で評価するた     め、合板自体は良くても、クロスの接着剤が悪ければ、ホルムアルデヒドの放散量は     多くなる。      (2) 表示性能は、住宅引渡時にその性能が存在すれば足りる。      ゆえに、「○年間保証」などという意味の性能保証制度ではない。      (3) 評価機関の中立性確保(性能表示制度の根幹問題)      評価機関は住宅供給者から評価料をもらう仕組となっており、評価機関が供給者か     ら独立性を維持できる制度的保証がない。建設省の説明では、@評価料が最終的に住     宅購入者に転嫁されること、A評価機関の指定要件において独立性を考慮すること、     B評価機関自身も責任追及の対象とされ、また、指定の取消等の制裁も予定されるこ     と等により、中立性が期待できるとしているが、その実効性については今後の状況を     見守るほかない。    四 住宅紛争審査会制度について   1.制度のポイント    (1) 性能表示住宅に関する紛争について、基本的に各弁護士会が指定住宅紛争処理機      関として住宅紛争審査会を設置し、裁判よりも簡易迅速に紛争処理。      (2) 紛争内容は、表示性能に関わる問題に限らない。     2.問題点    (1) 住宅紛争審査会による審査の要件         =建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅に関する紛争であること。      間口が極めて狭い。例えば、設計住宅性能評価書が契約書添付された請負契約にお      いて、完成時の性能評価が受けられなかった場合、審査会は利用できない。      (2) 法70条に基づく技術基準(ガイドライン)の内容・事実上の効果について     技術基準によれば、主要構造部に瑕疵なしとされる場合が多くなることが想定される。      しかも、単なるガイドラインを超えて、裁判などの場面において、瑕疵がないこと     の事実上の推定基準として供給者サイドに利用されかねない。      (3) 技術関連資料集について      住宅紛争処理支援センター編集の技術関連資料集は、瑕疵修補について完全回復を     前提にしない補修方法・補修費用を前提にしている。    五 最後に〜品確法により欠陥住宅問題は改善されるか〜   1.評価しうる点    (1) 瑕疵担保責任の強化は、住宅供給者に対し欠陥建築を抑止する一定の効果が期待      できる。      (2) 住宅性能表示制度は、住宅取得者に対し比較対照の一定の基準を提供し、また、     ある程度のチェック機能も期待できる。      (3) 住宅紛争審査会制度は、住宅供給者から一応独立した軸足を持つ審査が期待できる。     2.問題点    (1) 対象となる住宅が限定されている。      住宅性能表示制度を利用する契約は限られる。      全般に適用される瑕疵保証制度も新築住宅のみ。      (2) 住宅の性能・品質に対する考え方が全般的に低下しないか。      性能表示住宅は、本当に「高品質」と呼ぶにふさわしい内実を伴っているのか。      技術基準や技術関連資料集が一人歩きすることにより、「欠陥」や「修補」のレベル      が改悪されないか。      (3) 欠陥住宅紛争の受け皿が十分に拡充されたとは言い難い。      例えば、指定住宅紛争処理機関は、基本的に相談業務を行わない。                                           先頭に戻る       

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